母子父子寡婦福祉資金貸付金(読み方:ぼしふしかふふくししきんかしつけきん)は、ひとり親の家庭における父母等が、子どもの就学や就職などでお金が必要になったときに支援するための制度です。
この制度は、ひとり親家庭の父母等の経済的自立を促し、扶養されている児童等の福祉の増進が目的となってます。
ここでは、母子父子寡婦福祉資金貸付金の制度を分かりやすく解説し、お金を借りる方法としてのメリットやデメリットについても紹介してます。
目次
母子父子寡婦福祉資金貸付金の基本
母子父子寡婦福祉資金貸付金の「福祉資金」というのは、融資の目的となっているお金のことです。
たとえば、就業資金なら、「就業に必要なお金」の貸付金(融資)という意味です。
漢字が続くと難しく感じますが、どのようなお金の使いみちについて融資がされているのかと考えると分かりやすくなります。
母子父子寡婦福祉資金貸付金では、12の福祉資金について定められてますので、1つずつ確認していきます。
据置期間:返済初月から〇ヶ月は金利だけの返済でいい期間。
償還期間:返済初月からの返済期限。
事業開始資金とは?
事業開始資金は、ひとり親家庭の父母等の経済的自立を目的とする資金です。
たとえば、父母等が飲食店を始めるには、設備や什器、調理器具などが必要になりますが、これらの購入を目的にした資金になります。
285万円(福祉団体は429万円)
貸付対象者 | 据置期間 | 償還期間 | 利率 |
---|---|---|---|
ひとり親家庭の父母等 | 1年 | 7年以内 | 無利子 |
※保証人がいない場合は年1.0%
事業継続資金とは?
事業継続資金は、事業を営んでいる父母等が事業の運転資金などを目的として借入れできる資金です。商品や材料とうの仕入れや人件費などに充てることができます。
143万円
貸付対象者 | 据置期間 | 償還期間 | 利率 |
---|---|---|---|
ひとり親家庭の父母等 | 1年 | 7年以内 | 無利子 |
※、保証人がいない場合は年1.0%。
修学資金とは?
修学資金は、ひとり親家庭の子どもを高校や大学、専門学校などに就学させるための資金です。
※私立の学校に就学し、自宅外通学の場合について表示します。
- 高校(高等課程の専修学校):月額52,500円
- 高等専門学校:1年~3年までは月額52,500円
- 高等専門学校:4年~5年は月額90,000円
- 短期大学、専門課程の専修学校:月額90,000円
- 大学:月額96,000円
- 一般過程の専修学校:月額48,000円
貸付対象者 | 据置期間 | 償還期間 | 利率 |
---|---|---|---|
ひとり親家庭の児童または子 | 卒業後6ヶ月 | 20年以内 | 無利子 |
貸付対象者は、原則、ひとり親家庭で不要を受けている子どもです。また、父母等に対する融資の場合は、子どもが連帯借受人となり親子で一緒に借入れしたことになり、連帯保証人が不要になります。
逆に、子どもに対する融資の場合は、父母等が連帯保証人になります。
なお、就学中に児童扶養手当などの給付が終了したときは、上の表の融資額に児童扶養手当の額を加算できる場合があります。
技能習得資金とは?
技能修得資金は、父母等の経済的自立を促すことを目的に、就職や事業開始に役立てるための知識や技能習得を目的とする資金です。
たとえば、就職をする目的でパソコンを習ったり、栄養士やホームヘルパーの資格を取得するための費用が目的となります。
月額68,000円
貸付対象者 | 据置期間 | 償還期間 | 利率 |
---|---|---|---|
ひとり親家庭の父母等 | 知識技能習得を終えてから1年 | 20年以内 | 無利子 |
※保証人がいない場合は年1.0%
特別に認められた場合は、12か月分相当の資金を一括で受け取れることがあります。
なお、この資金で運転免許を取得する場合は、限度額が46万円までとなります。
また、知識や技能を習得するのに5年以上かかる場合でも貸付期間が5年を超えることはできません。
修業資金とは?
就業資金は、ひとり親家庭の子どもが就職や事業開始をして経済的自立を促すための資金です。
月額68,000円
貸付対象者 | 据置期間 | 償還期間 | 利率 |
---|---|---|---|
ひとり親家庭の子 | 技能修得後1年 | 6年以内 | 無利子 |
就業施設で知識や技能を習得している途中で児童扶養手当などが受けられなくなったときは、限度額に児童扶養手当の相当額を加算できる場合があります。
なお、特別な事情が認められたときに、46万円を上限に一括で融資が受けられることがあります。
就職支度資金とは?
就職支度資金は、ひとり親家庭の子どもが就職するために必要なスーツ、靴などを購入するための資金です。
10万円
貸付対象者 | 据置期間 | 償還期間 | 利率 |
---|---|---|---|
ひとり親家庭の子、および寡婦 | 1年 | 保護者に対する貸付:6年以内 | 無利子 |
※保証人がいない場合は年1.0%
※児童に対する貸付:無利子
通勤に自動車が必要な場合は、自動車等を購入する目的での貸付が認められることがあり、限度額が33万円までになることもあります。
医療介護資金とは?
医療介護資金は、医療または介護を受けるための資金です。医療または介護を受ける期間は、1年以内に限定されます。
医療:34万円
介護:50万円
貸付対象者 | 据置期間 | 償還期間 | 利率 |
---|---|---|---|
ひとり親家庭の保護者および子 | 6ヶ月 | 5年以内 | 無利子 |
※保証人がいない場合は年1.0%
生活資金とは?
生活資金は、ひとり親家庭の生活の安定と継続を目的とする資金です。
ただし、お金を借りる方法として利用できるのは、「知識・技能を習得中」、「医療・介護を受けている期間」、「ひとり親家庭になって7年未満」、「失業中」のいずれかを満たしている場合です。
月額103,000円、ただし知識・技能を習得中の場合は月額141,000円
貸付対象者 | 据置期間 | 償還期間 | 利率 |
---|---|---|---|
ひとり親家庭の保護者および父子家庭の子 | 6ヶ月 | 技能習得:20年以内 医療・介護:5年以内 生活安定:8年以内 失業:5年以内 |
無利子 |
※保証人がいない場合は年1.0%
生活安定のための融資は、ひとり親家庭となった時点から7年までが融資期間で合計240万円が限度となります。
また、養育費を請求するための裁判費用として、1,236,000円を限度に融資が認められることがあります。
住宅資金とは?
住宅資金は、自宅を建築、購入、リフォームなどをするための資金です。
150万円
貸付対象者 | 据置期間 | 償還期間 | 利率 |
---|---|---|---|
ひとり親家庭の保護者 | 6ヶ月 | 6年以内 | 無利子 |
※保証人がいない場合は年1.0%
特別な事情が認められたときは、限度額が200万円まで、償還期間が7年になる場合があります。
転宅資金とは?
転宅資金は、引っ越しに際して不動産の敷金などに充てるための資金です。
26万円
貸付対象者 | 据置期間 | 償還期間 | 利率 |
---|---|---|---|
ひとり親家庭の保護者 | 6ヶ月 | 3年以内 | 無利子 |
※保証人がいない場合は年1.0%
就学支度資金とは?
就学支度資金は、学校や就業施設に就学するときに必要になるお金をまかなうための資金です。
小学校:40,600円
中学校:47,400円
国公立高校等:160,000円
修業施設:100,000円
私立高校等:420,000円
国公立大学・短大等:380,000円
私立大学・短大等:590,000円
貸付対象者 | 据置期間 | 償還期間 | 利率 |
---|---|---|---|
ひとり親家庭の子 | 6ヶ月 | 就学:20年以内 就業:5年以内 |
無利子 |
結婚資金とは?
結婚資金は、扶養する20歳以上の子が結婚をする際に必要となる費用に充てるための資金です。
30万円
貸付対象者 | 据置期間 | 償還期間 | 利率 |
---|---|---|---|
ひとり親家庭の保護者 | 6ヶ月 | 5年以内 | 無利子 |
※保証人がいない場合は年1.0%
母子父子寡婦福祉資金貸付金のメリットとデメリット
母子父子寡婦福祉資金貸付金のメリットとは?
母子父子寡婦福祉資金貸付金を利用するメリットは、やはり、金利が非常に低いことです。無利子で借入れできる場合もあり、金利で返済の負担が大きくなる心配がありません。
また、国による制度なので、貸付金を利用する危険性を気にする必要はありません。据置期間もあるので、返済できるようになってから返済が始まるのもメリットの1つになります。
母子父子寡婦福祉資金貸付金のデメリットとは?
逆に、この貸付金のデメリットは、借入額が自分の能力を超えてしまう可能性があることです。あくまでも国からの借金になり、将来、返済していく必要があるお金です。児童扶養手当のような「もらえるお金」ではなく、「お金を借りる方法」にすぎない点に注意が必要です。
母子父子寡婦福祉資金貸付金でお金を借りるには?
母子父子寡婦福祉資金貸付金を利用して融資を受ける場合は、市区町村の「福祉担当」の窓口に相談します。事前に電話で問い合わせをして、用意する書類などを確認しておけば、手続きがスムーズになります。
また、上で取り上げた事例以外のことで資金を必要としている場合についても、市区町村の福祉担当窓口に相談するのがおすすめです。母子父子寡婦福祉資金貸付金の利用ができなかった場合でも、他の制度について案内してもらえることもあります。