生活保護の基本
生活保護とは?
生活保護は、憲法第25条の「すべての国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。」を実現させるため、最低限度の生活ができていない人に対し、生活保護費を支給する制度です。
簡単にいうなら、何らかの事情で収入が非常に少なくなったとします。少ない収入で生活ができず、国の基準を満たせば、必要最低限の生活ができるだけのお金が受け取れるということです。
生活保護の無差別平等の原則とは?
たとえば、借金があるから生活保護が受けられない、と思うかもしれませんが、生活保護法では、生活ができなくなった理由が問題になることはありません。
すべての国民に最低限度の生活を「無差別平等」に提供する制度です。日本国民であれば、誰であっても等しく平等に救済してくれる、というのが生活保護の基本にあります。
生活保護者の権利について
生活保護の受給が認められた人を「被保護者」と言います。生活保護法では、被保護者の権利として、下記の3つを定めています。
- 不利益変更の禁止
- 公課禁止
- 差押禁止
「不利益変更の禁止」というのは、正当な理由なく、すでに決定された生活保護の利益を損なうようなことがあってはならない、というものです。これは、「仕事をなかなか見つけないから、生活保護を打ち切ります!」ということが認められないということです。
「公課禁止」は、支給された生活保護費や品物に対し、税金をかけることができないというものです。生活を維持するために支給されたものは、100%受け取れるという趣旨になります。
最後に「差押禁止」というのは、支給された生活保護費や品物が差し押さえの対象となってはいけないというものです。銀行に振り込まれた生活保護費が差し押さえの対象となったり、生活保護費で購入した衣服などは、差し押さえられないというものです。
生活保護者の義務について
生活保護者には、権利だけではなく義務もあります。
- 権利の譲渡禁止(生活保護を受ける権利を他人に譲り渡してはいけない。)
- 生活上の義務(就職活動に励んだり、生活における支出で節約するなどの努力をしなければならない。)
- 届け出の義務(収入に変化があったとき、住所や世帯に変更があったときは、すぐに届ける義務がある。)
- 指示等に従う義務(保護の実施機関の指導や指示があった場合は、これに従わなければならない。)
- 費用返還義務(生活費に回せる財産や金品があった場合、その金品に相当する金額を返還しなければならない。)
生活保護費とカードローン
カードの返済のために生活保護費の受給を検討する人がいますが、基本的には、生活保護費を借金の返済に回すことはできません。あくまでも生活を維持するために必要な金品が支給されているだけで、カードローンの返済のためではないからです。
もし、カードローンの返済が追いつかず、これを理由に生活保護費の受給を考えているなら、その前に債務整理が必要となります。
自己破産や任意整理などで借金を整理し、それから生活保護の申請という流れになります。
なお、一度でも生活保護費を受給してしまうと、それ以降、頑張ってはたらこうという意欲がなくなると言われています。自分の人生全体を考え、受給を申請するかどうかを決める必要があります。